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小さい時に親から読んでもらった絵本って、結構頭の中に残っているものですよね。記憶力にやや難ありのボクですが、『わすれられないおくりもの』は強烈に内容を覚えています。

あらすじ

賢くそしてやさしく、みんなに頼られていたアナグマ。 そんなアナグマだったが、冬が来る前にこの世を去ってしまう。 『長いトンネルの むこうに行くよ さようなら』 という手紙を遺して。 彼の死を知り悲しみに暮れる動物たち。 彼らは少しずつ、アナグマとの思い出を語り始めるのだった。

初めて「死」を意識するようになったきっかけ

意外にも1986年刊行という、同い年のこの作品。この表紙や物語の中身は今も鮮明に覚えています。おそらく、数多く読んでもらった絵本で唯一ちゃんと記憶にある作品です。 この絵本はボクにとっては生まれて初めて「死」というのを意識する作品でもありました。 特に印象に残っているのが、アナグマが暗いトンネルへと進んでいくシーン。 そこではもう動かなくなったはずの手足は次第にかつての若々しさを取り戻し、アナグマは自分の変化を喜びトンネルの奥へと駆けて行ってしまいます。 そこには、どこか狂気のようなものを感じてさえいました。 ついにトンネルの向こうへと消えてしまうアナグマに、『行っちゃダメ、行っちゃダメ』という思いと、引き止めてはいけないという思いが交錯します。 その後に続く森の暖かな光が差し込む絵とは対照的で、恐ろしく儚げな雰囲気を感じました。

死別を乗り越えようとする動物たち、そして母の涙

多くの動物たちがその死を嘆き悲しみます。 絵本の表紙のように数え切れないほど多くのことを教え、親のような存在だったアナグマ。 彼らは次第に、アナグマとの思い出を語り始めます。 ハサミの使い方を習った者。 上手なスケートの滑り方を習った者。 そうやってアナグマの思い出を語り明かしていった新しい春の季節。 アナグマとの記憶は、悲しいものではなく良い思い出として動物たちの中に残っていくことになっていくのです。
このシーンを読んで今も思い出すのは、母の号泣です。
動物たちがアナグマとの思い出を話すシーン。 そのエピソード一つ一つを読み上げる内に母の声のトーンはどんどん落ちていき、次第に涙をこらえた声へと変わっていきます。 それが終盤になると大概その涙のダムは決壊し、文字を読めるような状態じゃなくなります。 母さん、最後までどうやって読見切ったんだっけなと書いていて思ったんですが、よくよく思い出すと、確か途中から読むのをバトンタッチしていた気がします。そりゃあ覚えてるわけですねw

親子ともに考えさせられる作品

「身近な人の死と、それをどう乗り越えていくのか」

この絵本には、こうした重いテーマが込められています。 ここ最近祖父母の他界を経験し、改めてこの絵本の内容に触れてみると、なぜかあの時の母の涙がより身近に感じられます。 親しい人の死というのは、どんなに覚悟していても胸が張り裂けそうになる思いを抱きます。 そんな時、彼らをどう「送り出す」のか、そして自分たちの心をどう「慰める」のか。 きっと、親子ともに心に残る作品になるはずです。ボクと母がそうでしたから。 ]]>

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